2009-11-18

カンポ広場に市が立つ―シエナ礼賛

世界遺産であるシエナ Siena のカンポ広場 Piazza del Campo に、700年の歴史上初めて市が立ったそうです。

イタリア・カンポ広場で初の市場

シエナのカンポ広場といえば、扇形の形状が優美な「世界一美しい広場」と言われ、8月にはイタリア有数のパーリオ Palio (地区対抗の競馬祭)が開かれることでも有名です。1997年の夏、パーリオ開催直前のシエナへ行ったことがありますが、パーリオを控えて観光客であふれる街の活気とともに、この街の文化水準の高さに目を瞠ったことが忘れられません。中でもシエナ大聖堂 Duomo di Siena に足を踏み入れたときには、ただただ「ドッカ~ン」という音が頭上で鳴り響きました。自分のボキャ貧が情けなくなりましたが、その時の驚嘆や感銘を表す言葉は、今でも見つかっていません。かつてフィレンツェのライバルでもあったこの街が、いかに力をもっていたかは、何の説明を聞かずともこの大聖堂を見れば分かります。イタリア中小都市の底力を見せつけられた1日旅行でした。

同じトスカーナでも、シエナにはフィレンツェとはかなり違う美術の伝統があります。ゴシック的な特徴を多く残すシエナ派 scuola senese の絵画は、ルネサンスの先鋒フィレンツェ派に比べると一見古風な印象を与えますが、実際にシエナの街を歩いてみると、往時はさぞかしパワフルでエネルギッシュであっただろうこの街に、ゴシック的な繊細さが何ともいえない優美さをもたらしていたのではないかと思えて、この街にはこの絵画でなければならなかった必然性のようなものを感じました。

人口規模(5万人強)で見れば決して大きい街ではありませんが、シエナ大学やシエナ外国人大学、キジアーナ音楽院 Accademia Musicale Chigiana などの学術・文化機関を擁し、学生や留学生も多く、若者の多い街だということです。また、1472年創立のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行 Banca Monte dei Paschi di Siena は、欧州最古の銀行の一つで、今なお当地に本拠を置くイタリア有数の銀行です。シエナ繁栄の基礎を築いた立役者であり、息の長い地道なメセナも行っているようです。

イタリアでどこが一番好き?と聞かれると、私はとても一つに絞ることができないのですが、シエナは紛れもなく最も好きな街に入ります。中小規模の街では一番好きと言ってもいいかもしれません。いつかシエナに長期滞在し、イタリアの都市(の魅力)をじっくり研究したい、たった1日の訪問以来、ずっとそんな思いを抱き続けている街です。

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