2009-12-17

Commedia dell'Arte のストーリーとキャラクター

Commedia dell'arte はもともと即興劇ですが、物語の大筋や登場人物の性格はほぼ決まっています。こうした基本的な約束ごとにしたがって、あとは役者たちが即興で話を進めていきます。そこでいかに相手役をやりこめるか、意表をつく展開を見せるか、その駆け引きが勝負どころ。ストーリー展開やキャラクターの性格といった大枠は守りながらも、いかに意外性を出して観客を引きつけ、喜ばせるかが役者の腕の見せ所だったのでしょう。

<物語の基本フレーム>

相対立する二つの家の息子と娘が恋に落ち、親や召使いを巻き込んで大騒動が繰り広げられる が、最後はめでたく結ばれる―これが物語の基本フレーム。どこか聞き覚えがありませんか?この筋書き。そう、世界で最も有名な恋愛劇『ロミオ とジュリエット』―悲劇的結末を除けば、これはまさにコンメディア・デッラルテのフレームそのままの世界なのです。実際、イタリアのみならずヨーロッパ中で大流行 したコンメディア・デッラルテは、シェイクスピアやモリエールの戯曲にも大きな影響を与えたと言われています。

<主なキャラクター>

登場人物は、様々な地域や身分に典型的と考えられる性格や気質を誇張して類型化したキャラクター(ストックキャラクター)で、人物同士の関係性もほぼ決まっています。

コンメディア・デッラルテの仮面(maschere)
目・鼻・額の形や大きさが各キャラクターの特徴を表す。
小さく丸い目、大きな鼻、狭い額→愚か系キャラの目印
大きな目、小さな鼻、広い額→賢い系キャラの目印
この組合せでキャラのインテリジェンスの度合いが分かる・・・

◆インナモラーティ(恋人たち) Gli Innamorati (The Lovers)
恋する若い男女。男をインナモラート innamorato、女をインナモラータ innamorata という(インナモラーティ innamorati は複数形)。いちおう物語の主人公は彼らである。この役は仮面をつけない。なお、ヒロインの名は、実在の名女優にちなんでイザベッラ Isabella という名が多い。

◆主人キャラクター
町の有力なファミリーの主で、主人公の恋人たちの親などとして登場する。

パンタローネ Pantalone ヴェネツィア出身の大金持ちの商人。ケチで偉そうな好色爺さんというキャラクター。頭はよく学もあり頑固で計算高い老人だが、若い娘を追い回して見境なく財産を貢いだり、コロッと騙されたりする。細身の長ズボンをはいており、パンタロン pantalon の語源となった。

ドットーレ Il Dottore (The Doctor) ボローニャ出身の学者。パンタローネと対をなす老人役。博学で雄弁だが、言ってることは意味不明。インチキなラテン語をしゃべって、怪しげな学識をひけらかすエセ先生といったところ。ボローニャはヨーロッパ最古の大学をもつ学問都市(la Dotta)として知られ、美食の都であることから肥満都市(la Grassa)とも言われる。ドットーレも太っていることが多い。

カピターノ Il Capitano (The Captain) 軍人。派手な軍服を着て威張っているが、実は気の小さい臆病者。かつてイタリアは、南部をスペイン、北部をフランスやドイツに支配されていたことから、カピターノは外国人(スペイン人)という設定になっている。

◆召使いキャラクター
パンタローネやドットーレの召使として登場。機転が利いたり、ずる賢かったり、間が抜けていたり…芝居に活気を与え、実質上の主役的存在であることも多い。召使いはベルガモ出身が多いが、かつてヴェネツィア共和国の一部だったベルガモ(今はロンバルディア州)は、貧しく、ヴェネツィアへ出稼ぎに行く人が多かったことに由来する。

アルレッキーノ Arlecchino ベルガモ出身の召使い。コンメディア・デッラルテといえばこのキャラ、という代表的なキャラクター。カラフルなつぎはぎの服が目印で、たいていお腹を空かせている。頭の回転が速く、口も手も体もよく動いて存在感抜群。何かにつけて計略をめぐらすが、どこか抜けているところもある。フランス語でアルルカン Arlequin 、英語でハーレクィン Harlequin と呼ばれ、道化役の起源とも言われる。

プルチネッラ Pulcinella ナポリ出身。のろまで騙されやすく憎めないダメ男系キャラ。身軽で機敏なアルレッキーノと対照的に、でっぷり太っていかにも呑気そうなキャラクター。白いだぶだぶの服を着ている。イギリスではパンチ Punch と呼ばれ、人形劇の「パンチ・アンド・ジュディ」 Punch and Judy へと発展した。

ブリゲッラ Brighella ずる賢くてがめつい守銭奴の小悪党。ベルガモ出身。アルレッキーノの子分などで登場。

ザンニ Zanni 初期のコンメディア・デッラルテに登場する召使い。ベルガモ出身。ここからアルレッキーノやプルチネッラなどのキャラクターに分化した。召使いキャラの原型。 Zanni とは Giovanni の愛称。

コロンビーナ Colombina
女の召使い。明るく開放的で浮気性、天性の知恵を持ち、肉体的魅力を振りまく、したたかな庶民派セクシー系。アルレッキーノの恋人やインナモラータの小間使い役など。通常は仮面をつけない。

◆参考サイト◆
La Commedia dell'Arte
Punch and Judy

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