2009-10-06

杜の都でアートセラピー―芸術療法学会@東北福祉大学

しばしイタリアから離れて、日本の東北、杜の都へ。
10月3・4日(土・日)、東北福祉大学(仙台)で開催された芸術療法学会に行ってきました。今大会(第41回)のテーマは、「芸術療法に求められるもの―よみがえる生命力」。ダンスを取り入れたperformance-orientedなオープニング・スピーチ(ステージ!?)で幕を開け、個別の研究発表、実技発表(体験参加型)、講演会、シンポジウムまで、個々のプログラムが相互に緊密に関連しあった2日間でした。通常の学会とかなり趣向の異なる展開、心身両面への刺激の多い内容に、今なお朦朧感が残る身体感覚を引きずっています。


JR「東北福祉大前」駅&福祉大のキャンパス(駅の目の前) 
駅は単式ホーム(上下線共有)の小さな駅。最近できたそうです。
キャンパスはいくつかあり、野球部員たちが案内・誘導係として随所に立っていました。 
 福祉大の野球部は有名で、金本や矢野、大魔神佐々木などの出身校。


芸術療法学会は、もともと精神科医が中心となって設立されたようで、今も会員の半数以上が医療系、その次に臨床心理士など心理学系、そしてその他という構 成のようです。一口に芸術療法といっても、ジャンルは絵画、音楽、演劇、ダンス…と幅広く、参加者も医師、研究者、カウンセラー、セラピストなど多岐にわたっています。芸術に関連しますが、(私のように)美学・芸術学畑出身の参加者は、ほとんどいないと思われます。私は会員ではないのですが、NPOの活動に大いに関係があるし、仙台にも行ってみたかったので(←これがホンネかも!?)参加しました。


オープニング風景

学会全体がstimulatingで、枠に収まりきらない豊穣さを内包していました。これは、日本の心理劇(サイコドラマ)の第一人者で、今大会の会長を務められた増野肇先生(ルーテル学院大学)の発想とプロデュース力に負うところ大であったと思います。濃密な2日間のプログラムの中でも、とりわけ舞踏家・大野慶人氏の講演会は感動的。これ一つだけでも、十分に参加した甲斐があるほどのものでした。講演会場はホールではなく、大きめの普通教室、フロアには段差もなく、椅子が講演者をぐるりと囲む形で配置されたしつらえ。ごくまじかで大野氏の言葉を聴き、動きを見ることができる、ある意味でとても贅沢な空間でした。
大野氏はあいにく喉を痛めておられ、大きな声が出せないので、パフォーマンスを交えながら小声で語る大野氏の言葉を、コーディネーターの町田章一先生(大妻女子大学/ダンスセラピー)が拡声器代わりに伝えるという形で進められました。が、そのかすれた小声がすでに大野氏の一部のようで、動きながら話す一連の流れ自体が一つの舞踏作品のようでもありました。話すとき/動くときのコントラスト(目つき、周囲に醸し出す空気感)、シンプルな腕の動きや歩き方の一つ一つの中に込められた内なるメッセージ、体の芯から湧き出る精神性、そして「場をつくる」技の見事さ。無個性な普通の教室が、大野氏の動き、語りによって、固有の「場」に生まれ変わる。周りの(物理的)環境がどんなであれ、固有の空気・固有の精神性をもつ場をつくることできるのだということを体験しました。
もちろん、そのベースには、肉体と精神のたゆまざる訓練があります。強烈だったのは、10分かけてしゃがむ、というもの。10分間しゃがみ続けるのではありません。10分かけて徐々にしゃがんでいくのです。大野氏が、暗黒舞踏の土方巽に会ったとき、やりなさいと言われたとか。少しずつ、少しずつ膝を曲げ、体の重心を下げていく。限界がくる。持ちこたえる。10分かけて、少しずつしゃがむ体勢に移っていくのです。考えただけでも、頭がクラクラしてきますね。他にも、家の中を歩くなど日常の所作を通じて身体感覚を研ぎ澄ませていく方法が具体的に語られ、ほとんどワークショップを受けたといってもよい高密度の1時間でした。

2 件のコメント:

むっちゃん さんのコメント...

学会の内容はわかりませんが…(汗)
仙台には行ってみたいです!!

alba さんのコメント...

仙台はいいですよ。ぜひ行ってみなはれ~