2010-01-27

西洋美術のナゾ―裸体表現をめぐる旅

本日、NPO法人シニア自然大学校主催のシニアCITYカレッジにて、西洋美術についてのレクチャーをしてきました。同NPOが大阪教育大学との協働により、シニアの方々を対象に開講している連続講座で、環境問題や時事問題から歴史・文化・芸術まで幅広い領域をカバーしています。昨年に続いて3回目の出講でしたが、50数名の受講者は皆さんひじょうに熱心で、近年の中高年層の知的好奇心、学習意欲の高さを実感します。レクチャー2時間+ディスカッション2時間=合計4時間の長丁場ですが、反応もよく、議論も活発な場の空気には、まったく疲れを感じません。

今回のテーマは、裸体画(nude)。裸体表現は西洋美術の基本であり、西洋美術に影響を受けた今日の美術において、裸体デッサンは画家の基本的トレーニングです。しかし、、、ごくごく素直な目で西洋美術の一群を眺めたとき、その裸体表現の多さには素朴な「?」もわいてくるのではないでしょうか。西洋美術を見慣れた現代人は、そういうものだ、と思っているかもしれません。それでも、マネの<草上の昼食>を生まれて初めて見るときの衝撃は、本作発表当時(1863年)の人々とそんなに変わらないのではないでしょうか。(実際、私が小学生のころ初めて画集でこの絵を見たときは、一体なんちゅー絵!?と、えらくビックリしたものです。)ドラクロワの<民衆を率いる自由の女神>が、あの緊迫した事態の中で一人胸をはだけているのも、考えてみればフシギです。事実、西洋美術に初めて本格的に取り組んだ近代日本の画家にとって、裸体表現をどのように自分たちのものにするかは、芸術上の大きな課題でした。


現実のシーンとしては想定しがたい、こうした裸体表現の数々。なぜこれらの人物は裸体なのか?同じ裸体画でも、絶賛された作品と非難轟々だった作品と、 何がどう違うのか?そんな西洋美術の根幹をなす裸体表現を、古代ギリシアのクーロス、コレー像から近現代まで俯瞰するという時間軸の長~い内容。しかも最初プロジェクターが不調で満足に画像も見られなかったのですが、皆さんたいへん興味をもって聞いてくださり、グループ・ディスカッションでも多彩な意見が飛び交いました。受講者の皆様の西洋美術への親しみが増し、見る楽しみ・喜びが深まったならば本望です。

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